贈与を行なう際の贈与税には注意すべき

財産を譲り渡すことになる贈与は、慎重に行うべきだといえます。



贈与税の対象となる財産に制限はない


親や祖父母などから土地などの財産を譲り受けると「贈与」となり、贈与税の対象となります。

その「贈与税の対象となる財産にはどのようなものがあるのか。」といえば、

  • 土地
  • 土地の上に存する権利(地上権や借地権など)
  • 家屋(自宅や工場、駐車場など)
  • 事業用の財産(機械装置や売掛金、貸付金など)
  • 有価証券(株式や社債、非上場の同族会社株式など)
  • 現金・預貯金
  • 家庭用の財産
  • その他の財産(車や特許権など)

といったように様々な財産が贈与税の対象となり、基本的には相続税の対象となる財産と同じものだといえます。

また、贈与税には「みなし贈与」というというものがあり、こちらにも注意を向ける必要があります。

たとえば、時価が1億円の土地を親が子供に3,000万円で売却した場合。

この取引は民法上「売買」となりますが、税法上は贈与とみなされてしまいます。

具体的には時価との差額にあたる、

1億円 − 3,000万円 = 7,000万円

の7,000万円に対して贈与があったとみなされ、この7,000万円に関して贈与税が課税されることになります。

「親子間の売買なんだから、多少手心を加えることもあるだろう。」

などと感じることもあるかもしれませんが、税法上はこのような手心を贈与とみなしてしまうため注意が必要なのです。

そして、この7,000万円にかかる贈与税というのは、

(7,000万円 − 110万円)× 55% − 640万円 = 約3,150万円 (※特例贈与財産用として計算)

ということで、かなりの贈与税の支払いを行なわなければならないといえます。

このように贈与税というのは、

  • 民法上の贈与に取得する財産
  • 税法が贈与により取得したとみなす財産

の2つによって構成されるといえます。

みなし贈与財産としては、以下のものが挙げられます。

  • 生命保険金
  • 定額譲受
  • 債務免除益
  • 信託受益権
  • 定期金


贈与税の基礎控除


相続税には基礎控除というものがありその金額は、

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

となっています。

なので、法定相続人が1人の場合には3,600万円までの財産であれば相続税の支払いは必要ないこととなります。

そして、贈与税に関しても基礎控除というものがありその金額は、

年間 110万円

となっています。

この年間110万円の基礎控除というのは「贈与をした人から1人ずつ適用される。」というものではなく、

「贈与を受ける人で計算をする。」という貰った人ベースで計算することになります。

何人から贈与を受けても、贈与税の基礎控除額は年間110万円になるので、

「年間の贈与額が110万円を超えたら贈与税を支払わなければならない。」といえます。


相続時精算課税制度


相続時精算課税制度というのは、財産を贈与された際に2,500万円までは贈与税が課税されないという制度になります。

これは贈与税と相続税を一体的に課税する仕組みの一環として存在するもので、

この制度を使うと「複数年にあたっての贈与が2,500万円以内」であれば、贈与税が課税されない仕組みになるものです。

ただし、贈与した人が亡くなった際には、「その贈与財産の贈与時の価額」と「相続財産の価額」を合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税することになります。

その相続時精算課税制度の要件としては、

  • その年の1月1日時点において60歳以上の親や祖父母から
  • その年の1月1日時点において18歳以上(2022年3月31日以前は20歳以上)の子供や孫に贈与をする場合となります。

相続時精算課税制度の注意点

「贈与税が2,500万円まで課税されないなんて素晴らしい。」

とはいっても、この相続時精算課税制度にはいくつかの注意点があるものです。

まずは、暦年贈与と言われる110万円の贈与税の基礎控除額は使えなくなります。

また、2,500万円を超える贈与に関しての税率は20%となります。

たとえば、1年目に2,000万円、2年目に1,000万円の贈与を行なった際に支払うこととなる贈与税は、

1年目 2,000万円 ≦ 2,500万円 ※贈与税0円

となり1年目は相続時精算課税制度の範囲内なので、贈与税の支払いは0円です。

しかし、2年目には、

2年目 1,000万円 ≧ 500万円(2,500万円−2,000万円)

ということになり、2年目には相続時精算課税制度の金額を超えることになるので、

500万円 × 20% = 100万円

という100万円の贈与税の支払いが必要となります。

この年以後に贈与を行なう際にも税率は20%で永遠に固定されるのが相続時精算課税制度特徴だといえます。

なので「相続税の税率が20%を超える想定でないと、相続時精算課税制度を使っても得になることは少ない。」ということも考えられます。

すると相続時精算課税制度の使い所としては「かなりの相続財産がある場合に行なう。」といったことや、

「今後の値上がりが想定される財産を今のうちに贈与しておく。」という場合くらいしか使い所がないものだといえるかもしれません。

また、相続時精算課税制度は途中でやめることもできない点も注意しておくべきだといえます。