マイクロ法人で節税なんてやめたほうがいい

「マイクロ法人をつくって節税ってどうなんですか。。。」と質問された場合には、

「やめたほうがいいですよ。」と伝えているといえます。



社会保険料の負担軽減が大きなポイント


個人事業主として事業を営んでいると、

「個人事業主と他に、もうひとつマイクロ法人をつくって節税したほうがいいらしいよ。。。」と言われたりしたこともあるかもしれません。

この場合には、マイクロ法人という名の法人があるわけではなく、

株式会社や合同会社などをじぶんひとり社員としてつくる法人を「マイクロ法人」などと呼ばれているようです。

そして、この「マイクロ法人での節税。」というのは、

税金の節約のためにつくるというよりは「社会保険料を節約するためにつくるのが最大の理由。」だといえます。

個人事業主の場合には、国民健康保険と国民年金に加入することが多いといえますが、国民健康保険料は確定申告を行なった所得で変動するといった制度になっているのです。

だからか「国民健康保険の金額がまた上がった。。。」などと驚いたりもするでしょう。

それがマイクロ法人をつくって、そのマイクロ法人から役員報酬として給与を貰うかたちにすると、

「個人事業主としての所得に関わらず、役員報酬の月額によって健康保険や厚生年金の金額をホールドさせる。」ということができるのです。

たとえば、個人事業主の所得が1,000万円あったとしても、マイクロ法人から受け取る役員報酬を月額10万円にすると、

「その10万円が社会保険料(健康保険と厚生年金)上の所得。」となるので、社会保険料はかなり節約できるといえます。

それこそ、国民健康保険と国民年金を年間100万円超ほど負担している場合でも、

「社会保険料の負担が(個人負担分と法人負担分合わせて)月額3万円ほどですむ。」といえるのです。

なので、社会保険料の節約をしたい場合には「個人事業主とマイクロ法人の二刀流。」で事業を営んだほうが金銭的な負担は減るといえる場合が少なくないといえます。


「社宅で節税」はマイクロ法人に難易度が高い


社会保険料の節約以外にも、

「マイクロ法人にすれば、物件を会社が大家さんと賃貸契約を結んでそれを社宅にすれば節税になる。」などとも言われたりしているものです。

たしかに、個人事業主が自宅家賃の全額を経費にするのは無理だといえるレベルですが、法人が賃貸契約する物件に役員となるじぶんが住んだ場合にはその全額が経費にできるといえます。

ただ、社宅とするためには役員であるじぶんも「家賃負担分」としてマイクロ法人である会社に家賃の一部を支払わなければなりません。

その支払わなければならない家賃は、実際の家賃よりもたしかに低い金額でいいとはいえます。

国税庁が公表している「賃料相当額を個人負担すればいい。。。」といえるものですから。

役員に貸与する社宅が小規模な住宅である場合

次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

とはいっても、建物の固定資産税の課税標準額を確認するのは無理だといえるのでこの算式を組むのは難しいでしょう。

それでも「家賃負担額の3割程度を自己負担分とすれば、上記金額よりも賃料相当額は大きくなる。」ということはたしかにあるともいえます。

ただ「設立したばかりの信用力のない怪しげなマイクロ法人には物件を賃貸したくない。」という大家さんの方も少なくないものです。

なので、マイクロ法人が直接大家さんと賃貸契約をする難しさや役員となるじぶんが負担すべき賃料相当額の算出が難しいといえるので、社宅で節税はそれほど簡単ではないといえます。


結局、個人事業主よりも追加で支払うコストが増える


ただ、マイクロ法人をつくって運営していく場合には個人事業主よりもコストは増える傾向にあるといえます。

マイクロ法人を合同会社でつくる場合でも設立費用に10万円ほどかかりますし、株式会社でつくる場合には約30万円かかるものです。

また、個人事業主の場合には、

「税金の申告を税理士になんて依頼しなくていい。。。」といえるものですが法人の場合には税理士に税金の申告を依頼したほうがいいといえます。

じぶんで法人税の申告書をつくると「繋がっていなければならない数字。」といったものが、ズレたりもするからです。

なので、法人税の申告書を作成するための勉強をそこそこの時間をかけて行なう決意がないのであれば、税理士に依頼するコストが毎年数十万円単位で必要になるといえます。

さらには、個人事業主の場合には赤字だと所得税や住民税を支払わなくていいといえますが、法人の場合には赤字であっても最低7万円程度の法人税を支払う必要があるのです。

だからか「社会保険料を数十万円節約できる。」といっても、マイクロ法人を運営していくランニングコストでその資金的なメリットは相殺されてしまうといえるかもしれません。

「社宅にすると節税できる。」といっても、個人事業主の場合でも「仕事に使っている部屋。」となっている部分は支払っている家賃のなかで按分して経費にできるものです。

そして、法人の場合には法務局にその情報が登記されることになるので、社長となっているじぶんの住所も日本中に公開されてしまうともいえます。

などというように「マイクロ法人をつくって節税。」といっても、言われているほどの節税効果はなく、その法人を維持するコストが高いので安易にはおすすめしていないものです。