なぜ従業員を個人事業主化すると税務上のメリットが生じるのか

「従業員と業務委託契約書を結んで個人事業主になってもらい節税しよう。」と考えたくなる気持ちは理解できますが、税務上のメリットはほとんど享受できない場面がやってくるものです。



従業員を雇用すると付随的な経費は増える


「ひとを採用する。」となる際には、給与といった経費がかかるものです。

「きみを月額30万円で雇用しよう。」といったやり取りがされるので、給与という経費がかかることは想定の範囲内だともいえるでしょう。

とはいっても、給与以外に経費がかかってくるのが従業員を雇用することだといえます。

「自宅から会社までの交通費や会社から取引先までの交通費。」

「PCやデスクなどの備品。」

「社用携帯やその通信費。」

「労いを込めた懇親会費用や会議費用。」

「会社負担分の社会保険料。」などといった付随的な経費がかかってきたりもするものです。


社会保険料の負担も侮れない


その従業員を雇用した際にかかる付随的な経費のなかで最も負担が大きいといえるものは、社会保険料だといえるものかもしれません。

社会保険料は会社と従業員が折半で負担するもので、

「従業員が負担するのが給与に対して約15%。会社が負担するのも約15%。」となります。

なので「30万円の給与を。。。」といっても、会社はその従業員へ社会保険料分として45,000円を給与にプラスして支払うことになるのです(都合345,000円)。

この社会保険料は、医療費や将来支給されるはずの年金の積立金の性格を持っているともいえるので国家の維持には必要な負担だとはいえるかもしれません。

とはいっても、従業員を雇用するためには付随的な費用がそこそこかかりすぎるともいえるのでしょう。

だからか「従業員を個人事業主化させる。」という手法が編み出されるのです。


安易に従業員の個人事業主化を考えるとしっぺ返しを受ける


従業員を個人事業主化させれば「備品などは個人負担として用意して貰う。」となるので、会社の負担は減るといえます。

また「従業員満足度を上げるために。」などと懇親会費用や社員旅行などもする必要がなくなるといえるかもしれません。

さらには「社会保険料の負担もなくなる。」といえるでしょう。

「30万円でこの仕事をお願い。」といった「30万円取っ払い。」で済むともいえる可能性があるものです。

ましてや従業員への給与支払いや社会保険料は消費税の課税仕入れにはならないのが、

個人事業主への外注費の支払いは「消費税の課税仕入れ」になるので消費税の納税負担も下がるといえます。

「インボイス登録をしていたらでしょ。。。」とも感じるかもしれませんが、

2029年9月30日までは一部が課税仕入れとできるので、その個人事業主がインボイス登録をしていない場合でも消費税の節税はできるのです。

なので「給与以外の交通費や消耗品費、交際費や社会保険料の支払いを抑えて消費税までも負担軽減できる。」ともなる、従業員の個人事業主化を試みるメリットが囁かれるのです。

とはいっても「従業員時代とほとんど同じような働き方。」「会社の指揮命令下。」にあるような仕事のやり方の場合には、

たとえ業務委託契約書を結んでいても税務上は「これは実態として業務委託ではなく従業員だから、消費税の仕入税額控除は認めないし源泉所得税も納めてね。」と税務調査があった場合に指摘されてしまいます。

かなりの高確率で。。。

それこそ、売上規模がそれほど大きくはない会社だったとしても「従業員の個人事業主化。」を行っていると、消費税や源泉所得税の延滞税も含めて数百万円単位の税負担が生じるものです。

「従業員の個人事業主化で節税」といっても、税務面や社会保険料の面、さらには労働法の関連から見てもそのメリットが享受できない指摘はいつかやってくるといえます。

そんな「安易な節税策。」は目をつけられているので、避けていくべきでしょう。