フリーランスは消費税のインボイス制度の影響を減らすために簡易課税制度を選択しよう

いままで免税事業者であったフリーランスの方は、簡易課税制度を選択してインボイスの手間を少なくしていきましょう。



消費税の経理はそれほど簡単ではない


所得税や法人税の経理を行なう際に注意すべきことといえば、

「売上を漏れなく計上し、事業に関連性のある経費しか計上してはならない。」ということだといえます。

すると「経費であれば科目は何を使っても大きな問題とならない。」ということもあるものです。

なので、フリーランスの所得税や小規模企業の法人税の計算の場合には、

「科目についてはそれほど悩みすぎずに使いたい科目を使い続ければいい。」といえます。

たとえば「事務消耗品費」や「消耗品費」などは、どちらを使ってもそれほど税務上の大きな問題にならないといえるのです。

とはいっても、消費税を計算する場合には「所得税や法人税の経理手続きよりも手間をかけなければならない」といえます。

接待のために食べ物をテイクアウトした際には

「軽減税率の8%。」として消費税の区分を計算しなければなりませんし、

銀行借入における支払利息は「非課税仕入れ。」といったように区分して経理をしていかなければならないのです。

このような「消費税の区分」を間違えてしまうと、適切な消費税額の計算ができずに税務調査で指摘されるということになってしまいます。


フリーランスもインボイス制度に登録をしないと手取りが減る


2023年10月1日よりはじまる消費税のインボイス制度。

このインボイス制度によって、いままでは消費税の納税をする必要がなかった事業者だったとしても納税をする必要が出てくるといえます。

では「消費税のインボイス制度の登録をしなければどのような影響があるのか。」といえば、

「手取りが減るか最悪の場合には取引が停止される。」ということが想定されるといえるでしょう。

消費税というのは、最終的に負担しているのは「消費者」であり、

「事業者は売上で預かった消費税。」と「経費で支払った消費税。」の差額を「消費者に変わって納めている。」といった間接税になります。

なので「消費税の納税」といっても、実際には預かり金の清算をしているだけだといえます。

とはいっても「いままで消費税の課税事業者でなかったから、消費税を預かりはするけど納税はしていない。」といったフリーランスの方の場合には、

「実質的な手取り収入が減る」というのがインボイス制度の大きな影響のひとつになります。

たとえば、いままで消費税の免税事業者であった場合に、

年間売上 990万円

だったものがインボイス制度に登録をしなければ、

年間売上 900万円

ということで、

990万円 – 900万円 = 90万円の減収

となってしまうのです。

たしかに「取引先のすべてが消費者。」という場合には、インボイス制度の登録をしなくても、「年間売上990万円」を続けることはできるといえます。

とはいっても「取引先がすべて消費者。」といった業種は、それほど多くはないでしょう。

取引先からすると免税事業者と取引をすると「インボイス制度になると仕入税額控除ができない」ことになり、その消費税負担分が値上げされたのと同じことになります。

するとその取引先は、インボイス制度が始まると免税事業者に対して消費税分の値下げ要請をすることになるでしょう。

それによっていままで税込で請求していた免税事業者は「その消費税分だけ売上が減少する」ことになるといえます。

もし、その値下げの要請を拒否したとすると、仕入税額控除ができない免税事業者との取引は多くの事業者が避けることになる懸念もあるのです。


簡易課税制度でインボイス制度の手間を最小限にする


「フリーランスもインボイス制度の登録をしたほうがいい。」

といっても、消費税の計算というのは経理にも書類の保存にも手間がかかるものだといえます。

なので、消費税の経理手続きや書類保存の手間を減らすためには「簡易課税制度」を選択すべきです。

「簡易課税制度」とは、

基準期間(前々年や前々期など)の課税売上高が5,000万円以下の事業者について、課税売上高に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて仕入控除税額を計算することができる簡易的な方法。

になります。

この簡易課税制度を利用するためには、原則としてその適用を受けようとする課税期間開始の日の前日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。

そして、簡易課税の計算で用いられるみなし仕入率は次のとおりです。

区分 業種 みなし仕入率
第一種 卸売業 90%
第二種 小売業 80%
第三種 製造業、建設業 70%
第四種 その他飲食業など 60%
第五種 サービス業 50%
第六種 不動産業 40%

インボイス制度については、免税事業者にとっては収入の減少や取引停止などの死活問題にもなるものだといえます。

ただ、簡易課税制度を適用すれば「経理手続きに関しては売上の区分を注意すればいい。」ので負担感は大幅に軽減されるでしょう。

また、簡易課税制度であれば、仕入税額控除をするためのインボイスの保存は不要とすることができます。

たしかに法人税や所得税の課税所得の計算上、領収証などの保存は必要だといえます。

それでも、電子帳簿保存法の要件を満たせば簡易課税制度を適用することで書類の保存を逃れることができるので、

「簡易課税を選択する」というのが、フリーランスのインボイス制度に対する最適解になるといえるかもしれません。