「節税保険」や「運用保険」を税理士が否定する理由

税理士が販売代理店となって売ることもある「節税保険。」

そんな「節税保険」を売ることもなく、それどころか保険の営業マンと「節税にも運用にもならない。」と口論になるほどの避けるべき理由を挙げていきます。



事業のパートナーとして保険営業マンを頼るひともあるかもしれない


尖った革靴にストライプのきついスーツに身を包む保険の営業マン。

そんな保険営業マンを事業のパートナーとして信頼している事業者の方もいるものでしょう。

「あいつは特別な保険商品をじぶんだけに売ってくれる。」

「税理士や銀行員は話を聞いてくれないけど、保険営業マンだけは話を聞いてくれる。」

などと感じたりもしているかもしれません。

ましてや彼らは、

「保険に入ることで法人税を節税することができます。」

「銀行にお金を預けていると金利は雀の涙だけど、外貨建て保険で運用することによって資産運用できます。」

「万が一の保険機能を備えながら4%もの利回りが可能となっている金融商品は保険にしかありませんよ。」といったセールスをするものかもしれません。

そのようなセールストークを聞くと、

「税金を払え。」などと言ってくることがある税理士よりも信頼をおくことがあるものでしょう。


「保険で節税」は嘘なのか


「今期の税金の支払いを何とか少なくしたい。」と考える際には、

「事業に必要な資産を購入する。」といったことがひとつの選択肢になるといえます。

たとえば、法人税の税率が30%だとすると、

「100万円の資産を購入すると法人税が30万円安くなるので、実質的にはその資産を70万円で買うことができた。」といった値引き効果や法人税負担が減る節税効果もあったりするものです。

とはいっても「資産」を購入した場合には、

「一組30万円以上の物は減価償却資産」となり一括で経費とはならず思ったほどの節税効果がないと痛感するかもしれません。

なので「大型節税をするのであれば、減価償却の壁がない保険で節税したほうがいい。」といった提案をする保険営業マンが存在するのでしょう。

ただ「大型節税で多額の経費計上ができます。ましてや解約した際の返戻金も実質100%以上です。」などといった保険は規制が入ったものでした。

そのような節税保険というのは、

  • 途中で解約することを見込んで「解約返戻率が80%超」の保険に加入する
  • 経費となった保険料で利益を圧縮し法人税が節税できる
  • 中途解約のタイミングで役員退職金などの経費を計上することで、解約返戻金を受け取った際の利益と相殺して税負担を回避する

といった特徴があったものでした。

たしかに、2019年の税制改正が入る前には「スケジュール通りに役員を退職し退職金を支給するなら。」といった条件付きで節税になったといえるかもしれません。

それでも、役員退職金を支給した期に生じるはずであった「節税効果」がなくなるので、実質的には課税の繰延であり思ったほどの節税効果はなかったといえます。


保険を保険以外の目的で加入して儲かるのは保険会社関係者だけ


「保険で節税」といったことや、

「保険で資産運用。」ということが本当に可能なのであれば、その保険営業マンや保険会社が自己資金を投入しわざわざ一般に販売する必要もないはずです。

また、商売の寿命が短くなっている現代においては「スケジュール通りに節税をする。」といっても、

うまく行かずに「掛け金よりもかなり低い返戻金で保険を解約せざるを得なかった。。。」といった経営者の方も少なくないものだといえるでしょう。

ましてや「美味しい節税。」などというものは、国税庁が課税の公平性の観点からも黙っていないので規制がかかってくといえるものです。

このようなことは、情報感度の高い事業者の方が知る機会も増えてきたので「保険で節税。」というセールストークは使えなくなってきたといえるかもしれません。

だからか、保険営業マンは「保険で資産運用を。」などとセールストークを変えて保険の販売に勤しんでいるといった昨今の事情もあるのかもしれません。

とはいっても、保険には「万が一のリスクに備える。」という保険機能を果たすために掛け金の全額が運用に回される金融商品ではないものです。

そして、保険営業マンにも多額の販売手数料が入るのが「節税保険」や「資産運用保険」だといえます。

「なかなか事業の相談相手がいないなか保険営業マンが一番親身になってくれるから。」といっても、保険営業マンは保険販売で生計を立てている職業です。

「ただの課税の繰延で節税とはならず。」

「ずさんなスケジューリングで課税の繰延すらも失敗し。」

「掛け金が目減りしていることを見ないふりをして解約する。」となるのが節税保険や運用保険の末路だといえます。

そんな節税保険に入る際には、少なくとも保険販売に携わっていない税理士にひと言意見を聞いてみることで大切な資産を失わずにすむといえるかもしれません。