個人事業主の親が学生の子どもに支払った給与は経費にはならない

「生計を一にしている学生の子どもへの給与。」は、

「税務上の経費として認められない。」ので、たとえ支払いの事実があったとしても経費に計上するのはやめておきましょう。



子どもに給与を出せば節税になるかもしれない


「個人事業として独立し、順調に事業も拡大してきた。」

「まだ学生の子どもにも事業を手伝ってもらっているし、そろそろ子どもに給与を出すかぁ。」といったことは事業を営んでいると感じるものかもしれません。

税金というのは、

「売上 – 経費」の残りである利益に対して課税されるものなので、経費が増えることにより支払う税金は少なくなるといえるものです。

なので、事業が順調な方ほど「税金対策を。。。」ということで頭を悩ます場合もあったりするかもしれません。

すると、このようなことを考えるものでしょう。

「そうだ。子どもが事業を手伝ってくれているんだから、アルバイト代として給与を出せば節税になるじゃん。」と。

たしかに、給与というのはその事業を営むにあたっての正当な支出であれば、経費として認められるので税務調査においても指摘されることは少ないものです。

とはいっても、生計を一にする子どもに対して支払った給与は、事業の経費とはならず税務調査においてもひとつの争点となってしまうといえます。


生計を一にしている子どもへの給与は経費にならない


「大学生の娘に事業を手伝ってもらっているから、毎月アルバイト代として給与を支払っている。」

「無職の息子が、たまに事業を手伝ってくれるからアルバイト代を出している。」

などといったことは、事業を営んでいると少なからずあるものでしょう。

たしかに、そのような「子どもに給与を支払う。」というのは、やってはいけない行為というわけではありません。

「手伝って欲しい。」と言葉で伝えるだけでは難しいことも、

「アルバイト代を出すから、ちょっとお店を手伝って。。。」といった旨を伝えるだけでも、その子どもが手伝ってくれる可能性は高くなるものでしょう。

ただ「そんな子どもに対する給与の支払いは税法上の経費になるのか。」といえば、難しいといえます。

日常生活費の金銭負担を親が行なっている場合である、

「生計を一にする親族」に対しては、たとえ給与の支払いという事実があったとしても経費としては認められないのです。

その「生計を一にしている状態」というのは、同居の有無を問わず以下のような状態をいいます。

  • 同居をしている親が日々の子ども生活費を負担している場合
  • 仮に別居をしていても、生活費や学費、療養費などを送金している場合
  • 成人した子どもであっても日々の生活費を負担している場合

なので、これらに該当する状態であれば、子どもへのアルバイト代などの給与は経費として認められず「税務調査で指摘を受けてしまう。」となるといえます。


青色事業専従者給与に該当すれば経費になるけど、学生の子どもはこれに該当しない


「生計を一にしている子どもや親族への給与は経費にはならない。」といっても、

事業を手伝ってくれている専従者への給与は、たとえ生計を一にしている場合であっても給与としての経費として認められることになります。

その手続も「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することを要件として、

その届出書に記載されている金額を限度として経費になり税務上も認められるといえます。

とはいっても「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出すれば、その給与が必ず経費として認められて税務調査で指摘されないというわけではありません。

青色事業専従者給与の要件としては、以下のような状態である必要があります。

  • 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • その年を通じて6月を超える期間、青色事業者が営む事業に専ら従事していること

なので、学生の子どもなどは「本業は学生」となるので、

「専ら事業に従事している。」とならずに、青色事業専従者給与には該当しないのです。

また、配偶者の方が青色事業専従者給与であったとしても、他の従業員や類似の同業者の給与と比べて高額となる場合には税務調査において否認されることもあるといえます。

「代えが効かない人材だから学生の子どもを青色事業専従者給与にしている。」といっても、

税務調査における調査官のやる気を刺激することだけになるので、やめておくべきでしょう。