相続税で事業用の土地評価の特例を受けるためには、その事業を承継しなければならない

土地の相続税評価額が減額となる「小規模宅地等の特例。」

そのなかでも特定事業用宅地の小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、事業の承継が必要となります。



相続税の負担を減らすことができる小規模宅地の特例


相続税の計算のなかで大きな財産の割合を占めるものが不動産だといえるでしょう。

それこそ「うちには財産なんてないけど。。。」といっても、所有している自宅がある方も少なくないかもしれません。

また、事業を営んでいる方で店舗や工場用の敷地などを所有されている方もいるものでしょう。

そのような土地に相続税が課税されて、

「土地を売却しなければ相続税が支払えない。。。」ということもあるかもしれません。

このような居住用の土地や事業用の土地を、

「相続が生じたことによって手放さなければならない。」となってしまうと、相続によって生活基盤が壊される懸念もあるものですよね。

その問題を軽減するために「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」があります。

そんな小規模宅地等の特例は、相続した土地の限度面積までに限って「通常の評価額から一定割合を減額して相続税の課税対象として評価する。」制度になります。

※土地だけではなく、事業用や居住用の借地権も同様の取り扱いとなります。


小規模宅地等の特例となる宅地は複数の種類がある


「土地の評価額が減額される小規模宅地等ってどのようなもの?」

といわれれば、以下のものになります。

国税庁HPより

この表を簡潔に説明すると、

特定事業用宅地・・・・400㎡

特定居住用宅地・・・・330㎡

貸付事業用宅地・・・・200㎡

ということになるので、使用用途や広さによって相続税の評価額が減額される小規模宅地等になるといえます。

そして、土地の評価額が、

20%・・・・特定事業用宅地または特定居住用宅地に該当する小規模宅地

50%・・・・貸付事業用宅地に該当する小規模宅地

の2つに分かれることになるといえるでしょう。

たとえば、事業用の土地が300㎡で評価額が1億円だったとしても小規模宅地等の特例を使うと、

1億円 × 20% = 2,000万円 ※8,000万円の評価減となる

80%の評価減となり、土地の評価額が2,000万円になるので相続税の税額が低くなるのです。


特定事業用宅地は事業の継続が要件となる


土地の評価額が減額され、相続税の負担が減る小規模宅地等の特例。

とはいっても、事業用の宅地を80%減額とするためには以下の3つのパターンがあるので注意が必要だといえるでしょう。

被相続人の事業の用に供されていた宅地等の場合

被相続人の事業用宅地を相続した親族が、
相続開始時から相続税の申告期限までの間にその土地上で営まれていた被相続人の事業を承継する。
そのうえで申告期限までその土地を所有し、その相続税の申告期限まで継続して事業を営んでいること

なので、申告期限までに廃業などをしてしまうと小規模宅地等の特例を受けられないことになります。

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等の場合

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が、事業の用に供されていた事業用の土地を相続する。
その土地等を相続税の申告期限まで所有し、
相続開始の直前から相続税の申告期限まで継続してその土地等の上で事業を営んでいること。

これは、被相続人の土地上でそのひとが生前から事業を営んでいることが前提となっている点を注意すべきでしょう。

一定の法人の事業の用に供されていた宅地等

相続の直前において被相続人(同族関係者を含む)が50%超の株式を所有する。
同族会社の事業の用に供されていた宅地を相続した親族がその会社の役員となる。
そして、相続税の申告期限まで継続してその宅地をその会社の事業の用に供していること。

これは被相続人個人の土地を同族会社の事業用としていることが前提となっているものです。

この場合には、個人がその同族会社から賃料を受け取っていることが前提となっているので、無償で貸し付けていた場合には小規模宅地等の特例が使えないことになります。

さらには、同族会社の事業が不動産貸付業の場合にはこれに該当しないこととなる(別途規定がある)ので注意をしておきましょう。